縄文時代前期の海浜部集落を確認−中沢遺跡(石巻市給分浜)
2013.04.07 Sunday 00:10
石巻市中沢遺跡の発掘調査現地説明会が3月16日に開かれました。

石巻市中沢遺跡
現地説明会の様子。調査例の少ない沿岸部の縄文集落跡を見ようと、県内や岩手県などからもたくさんの見学者が集まりました。写真左は石巻市と宮城県、兵庫県の調査員さん、右端には地元作業員の皆さん。
遺跡名:中沢遺跡(なかざわいせき)
所在地:石巻市給分浜(きゅうぶんはま)字清水
調査主体:石巻市教育委員会
調査原因:防災集団移転促進事業
調査期間:2012年10月29日〜2013年9月(予定)
調査面積:10,000平方m

中沢遺跡は、牡鹿半島の南西部の給分浜に営まれた縄文時代の集落跡です。石巻湾に面した標高27mの小高い丘の上に立地しています。

東日本大震災の津波で被災した集落の高台移転の用地となったことから、石巻市教育委員会が宮城県教育委員会の協力を得て発掘調査を進めています。調査員には、石巻市や宮城県のほか、兵庫県からの応援職員の方もいらっしゃいます。発掘作業には地元住民の皆さんも多く参加していて、地域の復興に向けて一丸となって取り組んでいる様子が伝わってきました。

約20,000平方mの移転用地のうち、南東側半分で進められている発掘調査では、縄文時代前期の竪穴住居跡や遺物包含層、古墳時代と奈良・平安時代の竪穴住居跡などが確認されています。

石巻市中沢遺跡
縄文時代前期後半頃(約6,000年前)の竪穴住居跡を東側から見たところです。幅6m、長さ10mの長方形の住居跡(赤色のライン)と、幅6m、長さ15m以上の長楕円形の住居跡(緑色のライン)が重なって見つかっています。丘の頂部の平坦な場所で海への眺望も開けた最良の立地です。

この時期の長大な住居跡は、県内では栗原市の嘉倉貝塚で長楕円形のものが見つかっています。長方形のものは岩手県遠野市の綾織新田遺跡で見つかっていますが、県内では初めての発見です。これまでの調査例はいずれも内陸部のもので、沿岸部にもこうした長大な住居を持つ集落の存在が明らかになった点が貴重な成果です。

石巻市中沢遺跡
住居跡の柱穴です。長方形の住居跡(赤色のライン)は10本の柱で建てられていて、周囲の壁沿いに木材を立て並べた溝が掘られています。長楕円形の住居跡(緑色のライン)では柱穴がやや大きく、16本の柱で建てられていたようです。残念ながら住居跡を覆う土の堆積が少なく、炉などの屋内施設の状況は不明で、住居での生活に使われていた土器などの出土もあまり多くないようでした。

石巻市中沢遺跡
西側から見た住居跡です。住居の作られ方などについて解説されていました。奥に見えるのは牡鹿半島の山並みです。

石巻市中沢遺跡
集落跡のある丘の北西側には石巻湾が面しています。丘の周囲の5か所の沢地には遺物包含層が形成されており、縄文土器などが多く出土しています。

石巻市中沢遺跡
沢地の低い方から住居跡のある丘の方を見たところです。沢地に暗い色の土(遺物包含層)が堆積し、土器や石器が出土しています。

石巻市中沢遺跡
遺物包含層から出土している土器や石器。土器はあまり壊れていないようなものが多くあります。

石巻市中沢遺跡
山側の沢地に形成された遺物包含層です。まだ一部しか掘り下げられていません。周囲よりやや暗い色の土が沢を埋めるように堆積しているのが分かります。

石巻市中沢遺跡
出土した石器です。石斧や石槍、石鏃(やじり)、万能ナイフの石匙などがあります。写真中央は木の実などを磨り潰すのに使われた石皿と磨石です。珍しいものでは、C字形をした玦状耳飾りが出土しています。

石巻市中沢遺跡
木製の柄に装着して槍先として使われた石槍です。日本海側産とみられる良質の珪質頁岩を使って作られています。今から6,000年も前に奥羽山脈を越えて石器の材料がもたらされていたのです。中沢遺跡のような沿岸のムラから、山沿いのムラへ運ばれていった特産物もあったのでしょうか。

石巻市中沢遺跡
出土した縄文土器です。縄を押し付けて付けられた文様と、縁の部分に粘土紐を貼り付けて付けられたジグザグの文様が特徴です。

石巻市中沢遺跡
様々な文様の縄文土器。どれも小さなかけらですが、バラエティのある文様が付けられています。細い粘土紐を貼り付けたジグザグや格子状の文様がこの時期の特徴的な文様です。

これまで本格的な発掘調査が行われていなかった沿岸部の調査で、縄文時代前期後半に内陸部と同じような長大な住居を持つ集落が営まれていたことが明らかになりました。この時期の集落は内陸部でも調査例は多くなく、当時の人々の生活の様子を知る上でとても貴重な成果です。

発掘調査は今後も続けられ、海側に面した北西側半分の調査も新たに始まります。集落のほぼ全体が調査されることになります。当時の集落の様子がより克明に明らかになることでしょう。

今回の発掘調査に参加されている作業員さんの中には、東日本大震災の津波で被災した方が多くいらっしゃいます。この場所への高台移転を待ちながら、仮設住宅から発掘現場へ通っているそうです。―「これは私が見つけたんだ」、「このあたりが一番出たんだ」、「ここはあの人の土地なんだよ」と私たち見学者に笑顔で語りかけてくださったのが印象的でした。きっと、この場所に作られる新しい集落では、津波のこと、遺跡のこと、語り継がれていくはずです。

【参考文献・関連資料】
石巻市教育委員会2013『石巻市中沢遺跡平成24年度発掘調査現地説明会資料(平成25年3月16日)』

<中沢遺跡>

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