約2000年前の地震・津波痕跡−荒井広瀬遺跡(仙台市若林区)
2015.01.04 Sunday 13:34
仙台市荒井広瀬遺跡の見学会が2013年6月30日に開かれました。

荒井広瀬遺跡
東日本大震災の大津波が未だ記憶に新しい中、2000年前の弥生時代の大地震の痕跡が発見されたとのニュースにたくさんの見学者が発掘現場に集まりました。
遺跡名:荒井広瀬遺跡(あらいひろせいせき)
所在地:仙台市若林区荒井字広瀬
調査主体:仙台市教育委員会
調査原因:仙台市荒井東土地区画整理事業
調査期間:2013年5月21日〜6月末(予定)
調査面積:271平方m

荒井広瀬遺跡は、仙台市荒井東土地区画整理事業に伴う試掘調査で弥生時代の遺物を伴う河川跡(写真1枚目手前の落ち込み部分)が発見されたことから、平成24年度に新規登録された遺跡です。ここから約200m東側には、同じく荒井東土地区画整理事業に伴う発掘調査で、約2000年前の弥生時代中期に発生した津波の堆積物に覆われた水田域が発見された沓形遺跡(くつかたいせき)があります。

今回の発掘調査では、弥生時代から古墳時代にかけて埋没した河川跡(幅20m以上)と、これに沿って掘られた弥生時代の溝跡(幅約1m)が発見されました。このうち、弥生時代の溝跡の底面で注目すべき発見がありました。幅5〜20cmの地割れ跡が黒い筋状の痕跡となって現れ、これを津波によって運ばれた砂などの堆積物が覆っていたのです。

荒井広瀬遺跡
調査に協力した東北学院大学の松本秀明教授(自然地理学)の説明で約2000年前の地震・津波痕跡を見学しました。

荒井広瀬遺跡
約2000年前の地震・津波痕跡(部分的に掘り下げてあります)。弥生時代の溝跡の底面に地割れ跡があり、この地割れの中に溝の底面に堆積していた泥や土器、石器が吸い込まれています。さらに、地割れの上部を津波によって運ばれた砂などが覆っています。

荒井広瀬遺跡
溝跡と地割れ跡の断面を拡大して見た様子です。

荒井広瀬遺跡
地割れの上部を津波によって運ばれた砂が覆っています。

今回の発見の重要な点は、地震痕跡と津波痕跡がセットで発見されたことです。近接する沓形遺跡では広大な水田域が津波堆積物によっておおわれており、大規模な津波が仙台平野を襲ったことが分かっていましたが、その津波を起こした地震の痕跡は未確認でした。今回の調査で地震痕跡である地割れ跡が一緒に発見されたことで、弥生時代の大津波を引き起こした地震が例えばチリ地震津波のような遠地地震によるものではなく、日本海溝周辺を震源とする地震であったことを示す重要な証拠となりました。

荒井広瀬遺跡
溝跡や河川跡から出土した弥生時代中期の土器と石器。今回の調査では、地震・津波痕跡と一緒に人の生活を示す遺物が出土したことも重要です。今回痕跡を確認した地震・津波の後、この沿岸部一帯の集落は壊滅しており、内陸部へ移転したと考えられています。この場所で人々の生活が再び営まれるのは、約400年後の古墳時代になってからのことでした。

荒井広瀬遺跡
土の中から発見された2000年前の大地震・津波の痕跡に、多くの見学者がカメラを向けました。

【参考文献・関連資料】
荒井広瀬遺跡 遺跡見学会資料(平成25年6月30日)(PDF1.89MB)|仙台市教育委員会文化財課

<荒井広瀬遺跡>

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