栗原市入の沢遺跡の発掘調査現地説明会が2014年12月6日に開催されました。
遺跡名:入の沢遺跡(いりのさわいせき)
所在地:栗原市築館字城生野入の沢、峯岸
調査主体:宮城県教育委員会
調査原因:国道4号線築館バイパス建設工事
調査期間:2014年4月21日〜12月末(予定)
調査面積:6000平方m
入の沢遺跡は周囲との比高差が20mほどの見晴らしの良い丘陵の上にある遺跡です。今回の発掘調査では、この「山の上」と言っても良さそうな場所で驚くべき発見がありました。決して広くない山の頂上から、40軒以上もの竪穴住居跡がひしめき合うように発見されたのです。さらに、住居群のある平坦な面の周囲を囲むように巡る大溝と塀の跡も発見されました。
発掘調査の進捗は全体の3分の1ほどですが、集落の主体となる時期は古墳時代前期(4世紀)であることが判明。稲作農耕民にとっては不便極まりない立地である上に、大溝と塀で防御性を備え、さながら要塞を思わせるような山上の集落。いったいどんな人々が居住したのでしょうか。
集落を囲む大溝と塀跡。集落内部の平坦面(人が立っている場所)から一段下がったところを大溝が取り囲み、さらにその内側を平坦面の縁に沿って塀が取り囲んでいました。大溝の底面から集落内部の平坦面までの高さは最大で4mに及びます。さらに、大溝を掘り上げた土を外側に積み上げていたようです。
大溝跡は幅が最大4m、深さが最大1.5mほどで、固い岩盤を掘り込んでいます。断面の形がきれいな逆台形をしています。
塀跡は直径10cmほどの材木を20〜30cm間隔で立て並べたものです。
竪穴住居跡。一辺5〜6mほどの規模の住居跡が累々と見つかっています。住居跡の重複は少ないので、相当数の住居が同時に建ち並んでいたようです。
竪穴住居跡から土器が出土している様子。写真左端から時計回りに土師器の器台、壺、鉢、高坏が見えています。
出土遺物について説明する調査員。
左から土師器の壺、甕
左から土師器の器台、鉢、壺
出土した土器です。上の写真は左から土師器の壺、甕。左手前の破片は非常に大型の壺の一部です。下の写真は左から土師器の器台、鉢、壺。いずれも古墳時代前期(4世紀)のものです。
珠文鏡(しゅもんきょう)
内行花文鏡(ないこうかもんきょう)
今回の成果で最も重要な出土品とも言える銅鏡です。竪穴住居跡から3枚出土しており、県内で初めて、国内で最北の出土事例となります。上の写真は「珠文鏡(しゅもんきょう)」、下の写真は「内行花文鏡(ないこうかもんきょう)」です。内行花文鏡は半分に割れた断片ですが、割れた面のエッヂが滑らかになっており、割れた後に縁辺を磨いて大事にしていたようです。
左から垂飾品、ガラス小玉
管玉
垂飾品やガラス小玉、管玉といった装身具も豊富に出土しています。古墳に副葬されるような銅鏡や装身具が集落から出土するのは非常に珍しい事例です。どんな人物が居住したのか、興味が尽きません。
鉄製品(左から斧、槍鉋)
もう一つ重要な出土品は、鉄製品です。武器としての鉄鏃(やじり)、工具としての斧、槍鉋(やりがんな)が出土しています。こうした鉄製品の出土も非常に珍しく、古墳時代前期ではやはり国内で最北の事例です。
貴重な出土品を写真やビデオに収める見学者の皆さん。
今回の見学エリアの奥には、ブルーシートの下で調査を待つ住居群。残りの調査ではどんな発見があるのか、期待が高まります。
【参考文献・関連資料】
栗原市入の沢遺跡 平成26年度発掘調査現地説明会資料(平成26年12月6日)|宮城県教育庁文化財保護課
<入の沢遺跡>
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